伊勢河崎の景観
かつての商人たちの暮らしの風情を残す
お伊勢参りの参拝客を支えた「お伊勢さんの台所 河崎」
河崎は、伊勢市の中心を流れる全長7キロ余りの勢田川の中流域両側に広がる町である。勢田川の水運を生かした問屋街として知られ、特に江戸時代からは伊勢神宮の参宮客への物資を供給する「伊勢の台所」として栄えた。当時は蔵や町家が川の両岸に建ち並び、直接船から物資を蔵に入れることができるようになっていた。
勢田川の景観は、昭和49年7月7日の「七夕水害」を契機にした河川改修工事によってその姿を一変した。しかし川に沿って続く歴史ある町並みの景観は、今もなお町の人々によって守り育てられている。
河崎のまちなみ
勢田川左岸側の河崎本通りには、今も江戸時代からの町並みが残されている。川に沿って家が立ち並び、道はそれに沿って構成され、自然な屈曲が特徴ある景観を創り出している。また今は暗渠になっているが環濠の痕跡が所々に顔を出して都市形成の記憶を見せてくれる。
河崎は「切妻妻入り」の町並みである。これは伊勢の建物の特徴とされ、雨風が強い気候に関係している。そして勢田川沿いで伊勢の中心部に最も近く、大きな船が入港できるのが河崎であり、川や道に面して一軒でも多く問屋や店舗が建つようにと、狭い間口で奥行きのある建物が連なっている。
道は荷物を運ぶ大八車が対向できる大通りと、「世古」と呼ばれる路地で構成され、町中から川へと繋がっている。
蔵や町家の刻み囲いの外観、張り出し南張り囲いにも重厚感が漂う。屋根の形状は、直線の「スグ」、反っている「ソリ」、盛り上がっている「ムクリ」と、3種類の形があり、瓦には立派な鬼瓦や河崎独特の隅蓋と呼ばれるものが見られ、隅蓋は亀や蛙、桃、波など、水に関係したものや縁起物で彩られている。玄関にはしめ縄が一年中つけられていて、「笑門」や「蘇民将来子孫門」などの門符(木札)が特徴である。
特徴ある建物